エッセイ

欲がなければお金は不要?UberEatsについて考えてみた話

Uber Eats Illustration

最近フォロワーのギンギンさんのツイートにこんなリプライをした。

動画というのは下記のこと。ABEMAニュース【公式】で配信されている「人はいくらお金があれば幸せなのか」をテーマにした特集で、ツイートの対象は動画の主役となっている田中さん(仮名)という若者のことだ。

【お金と幸せ】「月に10万くらいで満足」正社員を捨てたUberEats配達員に聞く“幸せの価値感”|#アベプラ《アベマで放送中》

田中さんは23歳で、元々は会社員をしていたが、YouTubeなどで自由に働く人に感化され退職し、現在はUberEatsの配達員として好きな時に好きなだけ自由に働いている青年だ。住居は千代田区にある賃貸マンションの一室で、まるでカプセルホテルのような二畳半の部屋で生活をしている。

UberEatsの配達員としての月収は15万円前後だそう。ちなみに毎月の支出は以下の通り。これを見ると月収における固定費の割合が高すぎるように思える。家賃は収入の3割くらいが上限だと思うが、田中さんの場合は5割を超えている。冒頭のリプライは、なぜ収入の半分以上を家賃に払ってまで都内で生活する必要があるのかという純粋な疑問である。UberEatsに拘らなければいくらでも地方で自由に生活することはできるはずだ。

費目支出
家賃78,000円
レンタルサイクル(配達用)4,000円
通信費7,000円
食費20,000円
趣味(本やネット動画)10,000円

仮にUberEatsの配達員として働くことが好きだった場合、天職に巡り逢え素晴らしいの一言なのだが、その反面二十代の貴重な時間をUberEatsの配達員として費やすことのリスクも憂う。これは完全に余計なお世話なのだが、決して田中さんを揶揄するものではなく、二十代がとてつもなく価値ある時代だと知っているアラサーだからこそのお節介である。恐らくフォロワーのギンギンさんのツイートの背景も同じなのではなかろうか。

田中さんがUberEatsの配達員として働く理由は「好きなことだけして生きていたい」というものである。全くの同感で、私も同じことを思って生きている。では田中さんは配達員として働くことが好きなことなのだろうか、この動画からはハッキリとは読み取れないが、どちらかというと趣味嗜好に割く時間を増やすことで日々の幸福感を高めているように見える。言い換えれば、働くことでの消費(時間やストレス)を極限まで軽減できるのがUberEatsの配達員だと判断したのではないか。UberEatsの配達員には以下のようなメリットがある。

UberEats配達員のメリット
  • 好きな時に好きなだけ働ける
  • 煩わしい人間関係がない
  • 仕事の難易度が低い

会社員であれば、決められた就業時間、人間関係などがストレスの主な原因となってくるが、UberEatsの配達員にはこれらのストレス要因がない。それだけで人生の半分が幸せになり、もう半分を趣味嗜好に生きれば最高の人生となるだろう。私はこの考え方には大変共感が持てる。私自身も仕事環境に大きなストレスを感じないため、人生に余裕ができ日々の幸福感は高い。では田中さんに懸念されることは何なのか、私もギンギンさんも何を心配しているのか。

一番の懸念はUberEatsの配達員として働くことにより、生み出される資産がほとんどないことだ。資産とはお金のような金融資産はもちろんだが、ビジネスマンとしての知識や経験、キャリア、コミュニケーション能力といった所謂無形資産のことも指している。しかも無形資産は早く積み上げれば、その分影響する期間が長くなり社会から得る信用も大きくなる。私はアラサーなのだが、この歳になると友人知人間で、今まで生きてきた経験により大きな差が生じていることを感じる。脳死で働いている人間と、都市部の第一線で働いているビジネスマンとでは、金融資産も現代的サバイバル能力も社会的信用も、積み上げたものが圧倒的に違う。

その無形資産を形成するにあたり重要な二十代を、UberEatsの配達員として過ごした場合にどんな資産が得られるのか。恐らく体力面くらいだろう、その他には何もないと思われる。配送関連の仕事は近い将来、自動運転機能を搭載した車などに取って代わられる。そのリスクを考えるなら副業程度で配達員をすることがベターだと私は思う。

もう一つの懸念、これはマクロな視点だが、単純作業しかできない若者が増えることで自らの首を締めることになることだ。

自転車で物を運ぶという仕事は単純作業に該当する。それはAIや機械にいずれ仕事が奪われることを意味していて、無形資産として配送スキルは弱い。また人ひとりが配送できる物量にも限度があるためスキルアップによる増収も難しい。つまり資産形成ができず文字通り自転車操業になりやすいのだ。低賃金で働く人間が増えるほどGDPは下がり未婚率も上がる。人口減少は加速し、国内の消費は落ち込み政府の税収も減る。この超高齢化社会において、若者の負担はさらに拡大することになり格差も広がるだろう。

昨今新型コロナウイルスの影響で自粛を余儀無くされている我々は、配送業者による物流で生活が支えられていると改めて感じているところだ。もちろんUberEatsもその業態のうちの一つだ。物流業界は今後さらなる成長を遂げると思われるが、それは人による配送ではなく、自動化が進んだシステマチックな配送による可能性が極めて高い。そんな業界に低賃金で身を置き続けるのはハイリスク・ローリターン言えるだろう。

煩わしいと思っていた会社や人間関係と関わることで、実は社会での市場価値は上がっていたのだ。それに気づかず目先のことに囚われて安易に離れてしまうと取り返しのつかないことになる。幸いにも田中さんはまだ23歳で、これからどうにでもなる年齢だ。一度納得いくまで配達員を経験した後、また別の業界に転身することも充分可能だ。ただ自由で楽な生活故に、深い沼に沈み切ってしまわないかが心配である。

ただ自由になるのと資産を積み上げてから自由になるのとでは話が全く違う。いくら物欲がないとはいえ、前者を選ぶことで大きなリスクを抱えることになるだろう。積み上げた資産や社会の信用がなければ、大切なモノや居場所さえも守ることができない未来が待っているのだ。そういった事実を教えてくれる人間が、彼の前に現れることを願ったツイートとリプライだったと私は思う。

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